今日は一階音楽室(防音室)で仕事。今は三階で仕事をしています。
鍵盤上は自作の作業用テーブル。PCのキーボードやトラックボールを使うことができます。数年前パソコン肘(テニス肘)に苦しみましたが、右手でも左手でも作業できる様にトレーニング、特にトラックボールを左手主体作業にしてから症状は改善、現在では完治しました。さて、
デジタル・ピアノが全盛です。色々な理由から多くの方が利用しています。
ただ、アコースティック・ピアノに比べるといくつか問題点があります。
私はライブの際に少し経験しましたが、無理に集中練習したり、短時間とは言え必要以上に鍵盤を強打すると(私の場合はこれ)、腱鞘炎になる危険があります。
そして「ピアノの美しい響きの実感を得られない」のが残念です。デジタル・ピアノの音も良くなりましたがある意味では不変均一。言葉で表現しづらいのですが、「デジタル・ピアノはピアノではない」と考えています。「ピアノの美しい響き」、それは何と言っても素晴らしいものです。
一番の問題は、多くの人はアコースティック・ピアノ、特にグランド・ピアノの響き、素晴らしい「ピアノの美しい響き」を聴いたことがないので、実感もなにも、デジタル・ピアノの音をピアノの響きだと思っているらしい現実です。言葉の誤用(一生懸命ではなく一所懸命)も大多数が一生懸命だと思えば私の説明は無力です。デジタル・ピアノが一生懸命、アコースティック・ピアノ(特にグランド・ピアノ)が一所懸命だと言いたいのですが、無力感もあります。やれやれです。
アコースティックであればアップライト・ピアノでよいのですが、グランド・ピアノはハンマーが上下動するためアップライトに比べると高速連打等で優れており、響きの豊かさも比較になりません。欲を言えばグランド・ピアノでしょうが、問題は置き場所。大人数でも聴ける会場向き、そのための楽器として進歩してきたのです。
鍵盤の動きを含め音量や音色コントロールについて「タッチ」という表現が使われます。感覚的表現ですが、眼前のピアノはタッチが「重い」。指の弱い人は音が出ない可能性があります。
横浜市の依頼でピアノを選定した際、まず私が演奏してみての感覚評価になりますが、同時に聴いている横浜市職員の評価も参考にしました。評価はほぼ一致していました。
その上でもう一点注意したことがあります。実際に弾く人にとっての「タッチ」です。
「私が弾いて素敵」だけではだめだと思います。市民ホールのピアノです。小さいお子さんが弾く可能性もあるし、ピアノを弾いたことがない人(電子楽器でピアノの音色を選んだことでピアノを弾いた気分になるのは良いが…)が実際にリアルなピアノを弾くとどうなるか…。そんなシーンも多く見てきたからです。
多くの人が(私が選んだ)ピアノで音楽を楽しむ、そのために最適のピアノである様に、私なりによくよく考えて選んだピアノでした。
最近、遂に人類はブラック・ホールを見ることができました(NAOJ)。
ブラックホールとは直結しませんが、アルバート・アインシュタインや相対性理論が再び評価されています。その相対性理論の有名な公式です。
E = mc2(二乗) つまり エネルギー E = 質量 m × 光速度 c の2乗
次の話、(私は)これに関係があると思っています。
ピアノの美しい音の秘密、打鍵の際の力よりも指が鍵盤を通じてアクションに伝える速度(正確には加速度)だと思います。
ちなみにMIDIキーボードがベロシティ(強さ)を検知するのは鍵盤を押し下げた「力」ではなく「速度」です。
ピアノの美しい(しっかりした)音を出すポイントは指の素早い動きが大切です。むやみに力んでも身体が硬直するだけ、美しい(しっかりした)音は得られません。
反対に、ピアノで美しい小さな音を実現するにはしっかりとした指の動きだがとてもデリケートで「遅い動きが必要」です。「弱い力」ではなく「遅い動き」です。大きな音より遅く動かす小さい音の方が「力が要る」のです。私の実感です。
発音の瞬間に向け勢い良く自分の力を、ピアノなら「指先」、太鼓なら「バチ」に伝え、もっと重要なのは、発音の瞬間には上手に脱力している必要があります。
完全に脱力するとピアノの鍵盤は戻ってしまい音は途切れます。指は脱力しても身体から離れませんが太鼓はいい音がしても「バチ」が手から離れて次の一打が打てません。
打鍵した音を伸ばすためにはその鍵盤をそのまま押し下げている、バチは次の打撃に備えてバチを離さない、その程度の力まで脱力して保持する必要はあります。
一連の力加減と脱力、ピアノに限らず発声や管楽器にも共通して全ての音楽表現において「無駄な力が入っていると美しい音は生まれない」のです。
言葉で説明できても、皆さんがそれを実感できる様に指導するのは難しい課題です。
見ていてこちらまで力が入ってしまう様な、「その力の入り方(力み方)はどうにかならないかな」と、そう思っても、どう対策を伝えればよいのか悩みます。
経験を踏まえて、各自それぞれに何かヒントをつかめば変わってゆくはずなので、今後も私もそのあたりの伝え方は研究して行きます。
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