2014年12月8日月曜日

音楽制作について(7)そして音楽教室について(3)

前回、分解能という用語が出てきました。
テンポとは関係無く、音楽の基本となる拍である4分音符をどこまで細分化して表現できるかという性能です。分解能が小さい(分数で示されるので分母が大きい)程精密で細やかなタイミングで演奏を編集し再現できます。

4分音符の半分8分音符なら1/2、16分音符なら1/4、32分音符1/8、64分音符1/16…となります。当時(MIDIシーケンサが普及しはじめた頃)多かったのは1/96、分解能1/96の8分音符は4分音符の半分で48/96の長さ、4分音符を3分割する3連符(4分音符の1/3)は32/96となります。

QX-1は分解能1/384でしたが、マック・プラスで利用できるMOTU社製Performerは1/480でした。分解能の分母は3連符を正確に表現すべく「2と3の公倍数」ですが480では5連符も正確に表現できることになります。

最初にテンポと関係無くと書きました。テンポがある程度早ければ分解能が荒くてもあまり誤差は気になりませんが、喜多郎さんの楽曲でシーケンスを利用する場合はテンポが遅いのです。そこで1/384のズレがあると、そこだけ「おや?」ってわかります。「カックン」となるというか…

MIDIシーケンサが優れているのは自由にテンポを設定できることです。音楽教室では重要な要素です。最初から想定テンポで演奏できる人は少ないし、その様な方は余り習いにはお出でになりません。なかなか演奏がうまくゆかないから教室にいらっしゃるケースが多い訳で、演奏したい曲のテンポを少し遅くして練習し、演奏できる様になって来たら少しずつテンポ・アップ、最後には想定するテンポなり満足のゆくテンポで演奏できる様になります。

昨日のレッスンで Dave Grusin の名曲「Mountain Dance」のアドリブ部分を練習していたY.S.さん、テンポ入力の部分をご自分で少しずつアップして練習していました。既にテーマ部分は96(メトロノーム数字:4分音符96/1分の速度)で演奏できます。アドリブ部分、72で練習を開始、次に80、次に84、88とアップしてそれぞれクリア!最後に92で弾ける様になりました。傍らで見守っていましたがとても集中して練習されていました。一先ず92のテンポでアドリブを良く練習してから次に96でテーマとアドリブを続けて練習する予定だそうです。
この様な練習はとても重要です。それがMIDIシーケンサの登場で可能になったのです。

左の画像はMOTU社の楽譜アプリケーション Professional Composer で作ったもの(上の画像左下参照)です。これは著書「コンピュータ&MIDI(3)サウンドブック」の譜例、印刷用データを自分で書いて(現在の様にデータ入稿では無くレーザライタで一旦出力して出版社に渡していますが)提供しました。
印刷用楽譜の版下を作る作業を浄書(じょうしょ)と言います。これまで楽譜浄書は専門の業者に発注するしかありませんでした。浄書楽譜を校正できれば良いのですが、ポピュラー楽譜では校正をしないで出版されてしまうことが多く、出版後に浄書段階で発生したミスに気づいてがっかりすることもありました。
パソコンにおける楽譜アプリケーションの登場により、作編曲家が自分で浄書できる時代に入ったのです。楽譜データはSMFファイルを経由してMIDIシーケンサ(この場合は同じメーカのPerformer)へコンバートが可能です。デジタル的音楽制作の基本的な流れは当時と現在と基本は変わっていません。音楽の世界では早く(1980年代)からパソコンや各種専用機を利用したデジタル的編集が実用化されていたのです。

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