2014年12月30日火曜日

音楽制作について(12)そして音楽教室について(5)

私の若い頃からの仕事、そして皆様から評価を頂いた仕事として採譜(transcription)があります。

仕事を始めた当時はオープンリールのテープ・レコーダを使い、再生速度を半分(音は遅くなり1オクターブ低く聞こえる)にしたり倍(音は早くなり1オクターブ高く聞こえる)にするなどの工夫をして音を聴き採譜楽譜を書きました。その当時についての投稿は ココ にあります。

20年近く前に確立した方法ですが現在ではデジタル録音データの各種再生や編集に関するテクニックを利用して採譜します。

まずビートとテンポを測定します。採譜で難しいのは音の高さより拍子やリズムの判断です。

一定のビート感(テンポ感)の曲は良いのですが自由なテンポ(テンポ・ルバートと言います)には苦労します。テンポが終始全く変わらない録音はいわゆる打ち込みです。最近この種の打ち込みは減っています。やはり自然に少しテンポが揺らぐ方が心地良いですが、超一流のミュージッシャンの録音をテンポ解析すると「流石!」と感心します。一方、派手な演奏だがテンポのムラが目立つ録音に直面することもあります。これだけテンポのムラがあるとバンドを組むのは難しいなと感じるし、その様なアーチストは派手なピアノソロ活動を展開していてバンド活動はしていない…様です。

画像は上も下も同じ録音の同じ場所です。先日訃報に接したジョー・コッカーが歌った映画「愛と青春の旅立ち」テーマ曲のサビ冒頭部分です。上は マック における Digital Performer による解析作業、下は Windows における Cubase の編集作業です。
複雑なフレーズ、速いフレーズ、微妙な響き等はその部分(文字通りサンプル)をループさせて繰り返し再生して採譜します。場合によってはデータを倍の長さに伸ばして半分の速度で聞くことができます。テープ・レコーダで半分の速度にすると1オクターブ下がってしまいましたがデジタル音の場合には音の高さは変わりません。イコライザー(音の高さの成分に応じて強めたり弱めたりするエフェクター)を利用して音色を変えて聴くこともあります。

テンポ解析が終わり採譜が終了すると採譜アレンジの楽譜(そのデータ)が完成します。この楽譜データをSMF(スタンダードMIDIファイル)で出力、音資料と併走させてチェックをすることもあります。楽譜データから出力した演奏データの完成度を上げると元の音資料と瓜二つの模範演奏用MIDI演奏データが完成します。これをデジタル録音すれば楽譜の模範演奏録音となります。

デジタル的音データを音楽教室に応用することがあります。
生徒さんが持参されたアーチストの録音をまず解析、生徒さんの要望に応じてコード譜やメロディ譜や各種採譜アレンジ譜を作ります。必要があればクリック音を加えた録音を作ります。演奏開始部分に予備拍(カウントとかカウント・インと言います)を加えれば一緒に練習することができます。テンポが速ければ少し遅く録音します。キーが難しいとか、一緒に歌うには高いとか低いという場合は移調も可能です。
ただしデジタル的音データを伸ばして遅くとか圧縮して早くとか移調する編集は歪んで聞こえます。テンポの変化は少しだけ、移調もせいぜい半音が実用範囲です。少し早くとか遅く、半音上とか下の変化で十分という場合が多いのですが、それ以上の変化はMIDI演奏情報で対応します。

デジタル的音データの編集で生徒諸君の各種要望に対応が可能になりました。便利な時代です。
憧れのアーチストの録音と一緒に練習!それは楽しい!私も生徒諸君の上達を見守ることができて幸せを感じています。

0 件のコメント:

コメントを投稿