2012年8月17日金曜日

模範演奏におけるピッチについて

前回、「私の音楽の歴史とは別に次回詳しく書きますが、ピアノと違ってピッチ・コントロールが可能なパート、それはまず歌、そしてバイオリンなどの弦楽器(ギターもそうですね)、アルト・サックスなど木管系管楽器…です。音高(ピッチ)について考えます」と書いたまま、しばらく投稿を休んでいました。

下記の話題をどう説明しようかと考えていました。ネガティブな内容を書く時はゆっくり考えて、問題点を整理し、批判の対象に対するケアもしなければなりません。

アルト・サックスの模範演奏音で気になった録音がありました。

名曲「On Green Dolphin Street」、トニックのペダルトーンによるイントロに続いてドミナントとトニックで始まるテーマ冒頭が明らかに高い。上ずっている。口を締め過ぎています。サックスはリードに対する圧力というか口で微妙なピッチ変化を表現できます。アンブシュアと言います。
ベースやピアノ、つまりMMOのイントロ部分のピッチを基本に調べたところ四分音(しぶおん)くらい高い。ここまで高いと直ぐに高いと感じます。四分音は後程説明します。

仮にこの様な違いを実感できないとすると…例えばギターやベースのチューニング(調弦)がうまくできないでしょうし、歌や、バイオリンや、サックス…もうまく表現できません。ギターやベースの調弦についてはチューニング・メーターが進歩してこれに頼るチューニングも可能ですが、本来は同じ高さになる5フレットを利用したり、5フレットや7フレットや12フレットの倍音を利用して、自分の音感(耳)を頼りに調弦します。
そんな音楽の基本に関わるピッチの問題だけに「これには参ったな…」と感じたのでした。

私の音楽の歴史でご紹介したトランペットの白磯さんやサックスの佐野さん、名プレイヤーの演奏を身近で聴いてきたこともあるでしょうが、模範にならない演奏がCDに収録されて出版されているというのは…少々考えてしまいました。これで良いのか?

半音の違いを100セントとしてその半分のずれ(50セント)を四分音と言います。アラビア音楽とかインド音楽では四分音も利用して表現が行われます。



左の様に四分音を示す記号もあります。



このアルト・サックスの模範演奏はジャスト・ピッチが要求される場面ですね。アラビア音楽やインド音楽では…ない。

四分音と言えば面白い音楽があります。7月26日投稿(下記)「My musical history(20)」でご紹介した長谷川良夫先生のLPに収録された曲で「瓶(びん)の中の世界」と言います。

http://heartsmusicblog.blogspot.jp/2012/07/my-musical-history20.html

NHKからイタリア賞(自国語テクストを伴う条件がある放送音楽番組のコンテスト)応募のために作曲を委嘱され、1956年にNHKで放送され、その翌年のイタリア賞でイタリア放送協会賞を受賞しています。その中で二台のピアノが使われますが、内一台を全体的に四分の一音(50セント)だけ低く調律、この二台のピアノを二人の奏者が同時に同じ演奏をすることで四分音ずれた響きが東洋的な雰囲気をうまく醸し出す…(レコードのライナー・ノーツから要約)。


瓶の中にある世界、牛乳瓶の底から覗く感じというか…輪郭がぼやけた感じですね。そんな雰囲気が四分音ずらした二台のピアノの同期演奏(これも二人だから微妙にずれます)から感じられるのです。そんな意図でずらしてピアノを調律した珍しい例です。

現在であればこの種のチューニングは簡単。YAMAHAのMOTIFもセント単位で-102.4~+102.3の幅でチューニングが可能。普段は操作しないパラメータですが試しに最大値までずらしてみました。半音近くずれてしまい、私には何だか気持ち悪い感じです。この機能を利用して先程の四分音程度のずれを確認したのでした。


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