2014年12月13日土曜日

音楽制作について(8)

MIDIシーケンサが実用段階に入り、巷のカラオケ録音における人が演奏する録音パートの割合が減ってゆきます。
初期段階ではドラムス・パートだけ「打ち込み」のデータ(リズム・マシーン用演奏データ)、他のパートはスコアを渡しておりました(他のパートは人が演奏します)。海外の録音スタジオの方が施設利用費や演奏者のギャラが安いそうで、私が一部の仕事を請け負ったカラオケ録音は海外録音でした。台湾やフィンランドへ録音に行ったそうです。
当時の録音スタジオでは多重録音用テープレコーダがアナログ(テープの幅が広かった!)からデジタルに移行が進んでいました。業界で言う「3324(さんさんにーよん)」というテープレコーダ(ソニー製PCM-3324)の入っているスタジオが増え、後にはソニー製PCM-3348が業界標準となります。

そしてCDデビュー!
事前に自分のオリジナル曲を「打ち込み」でデモ録音します。当時は前橋市大利根町に住んで居ましたが、自宅の「打ち込み」作業現場です。マック・プラス(MOTUのPerformer)にMIDI打ち込みデータを作り、色々なメーカからのモニターで預かっていた機材や自分の各種音源を利用して録音します。
デモ録音を聴いたプロデューサやディレクターからのアドバイスを受け、アレンジを修正、CD収録曲を選び、曲順を決め、実際の録音へ進みます。
最初の打ち込み段階で使ったシンセサイザーやサンプリング音、私は可能な限りアコースティックなサウンドを目指しましたので、デモ音のパートを実際の生楽器(アコースティック楽器)の演奏で差し替えてゆきます。

当時の打ち込みで録音に使用したサンプリング音源、特にストリングス・オーケストラの音は微妙にループが気になりました。
ループとは楽器の音をデジタル変換(録音)して利用する(つまりサンプリング)際、ある一定時間の比較的短いサンプルを使います。当時の記憶容量ではあまり長くサンプリングできませんでした。長い音符を演奏すると、そのサンプルを何度も繰り返します。これがループですが、その繰り返しが聞いてわかるというか、気になるのです。
私のデビューCDの録音スタジオは日本コロムビア(赤坂)の1スタジオでした。一番広いスタジオです。
私の師匠、故管野光亮先生の仕事でテレビ・ドラマ「白い滑走路」の音楽を録音した大人数のオーケストラを録音できる、つまりそのオーケストラを収容できるスタジオです。
その思い出のスタジオでぽつねんと一人でピアノを演奏しました。
私の楽曲のストリングス・オーケストラのループが気になるというので音響のエンジニアの方が面白い録音をしました。
オーケストラ録音をするスタジオなので、オーケストラ全員に録音した音を再生して聞かせる巨大なモニタースピーカーがあります。スタジオに入っている演奏者向け、つまり調整室からスタジオ内全員に聞いてもらうためのオーディオ再生システムです。
これでループが気になるサンプリング音を再生、スタジオの巨大空間に向けてスピーカから出た音をスタジオの真ん中に設置したステレオ・マイクで再度録音するのです。スタジオの巨大空間がエコールームになるのです。

マイクで再度収録したストリングスの音は本当に生のストリングスの様にソフトにマイルドにというか自然になっていました。

とても感激しました。

そんな風に少しずつ生楽器の演奏に差替えてゆき、最後に自分のパート、ピアノを演奏しました。

実際の生楽器のオーケストラ録音、セガ・サターン用CD-ROMのために録音したアレンジを担当した際もデモ音を「打ち込み」で作り、これを聴いて「これでよし!」となってからスコアを各パートに写譜します。私が管野先生の弟子の当時はこの作業をやっていたのですが、その時は流石に時間がありませんので専門業者に依頼しました。
ポリドールのスタジオに大編成のオーケストラを入れて一気に録音しました。そのことは ココ に書いています。

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