2014年12月31日水曜日

音楽制作について(13)そして音楽教室について(6)

デジタル録音機が進歩し小さくて軽いポータブルな機器が出現しました。本体内蔵のステレオマイクで簡単にデジタル録音できます。
教室の発表会を録音、記録CDを作るのが簡単になりました。
教室で私や生徒さんの演奏を録音するのも簡単になりました。
そんな投稿が ココ や ココ にあります。

私は Roland R-09(左画像左)と YAMAHA POCKETRAK CX(同右)を利用しています。どちらも優秀な録音機です。
YAMAHA POCKETRAK シリーズが素晴らしいのは録音したデータをパソコンで編集できるアプリケーションがバンドルされてている(付属している)点。MIDIについては機能が限定されていますがデジタル録音に関してはプロ仕様のアプリケーションなのです。

私はこれを録音や編集に活用しています。

ピアノの上達には「自分の耳で自分の演奏をよく聴く」ことが大切です。
しかし練習段階とか人前で演奏する場面では多くの場合は気持ちに余裕がありません。自分の演奏を聴きながら冷静に演奏するのは難しいことです。
レッスンにおいて生徒さんの要望があれば録音直後に聴く必要もありますが、できればすこし後に冷静によく聴きなおすと良いでしょう。演奏中に気づかなかったことに気づくかも知れません。今後の練習に向けてのヒントや練習法のアイディアを得ることができるかも知れません。

2014年12月30日火曜日

音楽制作について(12)そして音楽教室について(5)

私の若い頃からの仕事、そして皆様から評価を頂いた仕事として採譜(transcription)があります。

仕事を始めた当時はオープンリールのテープ・レコーダを使い、再生速度を半分(音は遅くなり1オクターブ低く聞こえる)にしたり倍(音は早くなり1オクターブ高く聞こえる)にするなどの工夫をして音を聴き採譜楽譜を書きました。その当時についての投稿は ココ にあります。

20年近く前に確立した方法ですが現在ではデジタル録音データの各種再生や編集に関するテクニックを利用して採譜します。

まずビートとテンポを測定します。採譜で難しいのは音の高さより拍子やリズムの判断です。

一定のビート感(テンポ感)の曲は良いのですが自由なテンポ(テンポ・ルバートと言います)には苦労します。テンポが終始全く変わらない録音はいわゆる打ち込みです。最近この種の打ち込みは減っています。やはり自然に少しテンポが揺らぐ方が心地良いですが、超一流のミュージッシャンの録音をテンポ解析すると「流石!」と感心します。一方、派手な演奏だがテンポのムラが目立つ録音に直面することもあります。これだけテンポのムラがあるとバンドを組むのは難しいなと感じるし、その様なアーチストは派手なピアノソロ活動を展開していてバンド活動はしていない…様です。

画像は上も下も同じ録音の同じ場所です。先日訃報に接したジョー・コッカーが歌った映画「愛と青春の旅立ち」テーマ曲のサビ冒頭部分です。上は マック における Digital Performer による解析作業、下は Windows における Cubase の編集作業です。
複雑なフレーズ、速いフレーズ、微妙な響き等はその部分(文字通りサンプル)をループさせて繰り返し再生して採譜します。場合によってはデータを倍の長さに伸ばして半分の速度で聞くことができます。テープ・レコーダで半分の速度にすると1オクターブ下がってしまいましたがデジタル音の場合には音の高さは変わりません。イコライザー(音の高さの成分に応じて強めたり弱めたりするエフェクター)を利用して音色を変えて聴くこともあります。

テンポ解析が終わり採譜が終了すると採譜アレンジの楽譜(そのデータ)が完成します。この楽譜データをSMF(スタンダードMIDIファイル)で出力、音資料と併走させてチェックをすることもあります。楽譜データから出力した演奏データの完成度を上げると元の音資料と瓜二つの模範演奏用MIDI演奏データが完成します。これをデジタル録音すれば楽譜の模範演奏録音となります。

デジタル的音データを音楽教室に応用することがあります。
生徒さんが持参されたアーチストの録音をまず解析、生徒さんの要望に応じてコード譜やメロディ譜や各種採譜アレンジ譜を作ります。必要があればクリック音を加えた録音を作ります。演奏開始部分に予備拍(カウントとかカウント・インと言います)を加えれば一緒に練習することができます。テンポが速ければ少し遅く録音します。キーが難しいとか、一緒に歌うには高いとか低いという場合は移調も可能です。
ただしデジタル的音データを伸ばして遅くとか圧縮して早くとか移調する編集は歪んで聞こえます。テンポの変化は少しだけ、移調もせいぜい半音が実用範囲です。少し早くとか遅く、半音上とか下の変化で十分という場合が多いのですが、それ以上の変化はMIDI演奏情報で対応します。

デジタル的音データの編集で生徒諸君の各種要望に対応が可能になりました。便利な時代です。
憧れのアーチストの録音と一緒に練習!それは楽しい!私も生徒諸君の上達を見守ることができて幸せを感じています。

2014年12月27日土曜日

音楽制作について(11)

今日はデジタル録音の際のデジタル・データのやりとり(出入り)について書きます。データの出入りをI/O(アイ・オー)と言います。Input(インプット・入力)とOutput(アウトプット・出力)の頭文字です。
前回書いたサンプラーは楽器音や自然音(アナログ)を入力後にデジタル・データに変換して記録(録音)しこれを編集して出力(再生)します。先ずアナログからデジタルへの変換、AD変換をします。このデータ変換をする部分(部品)がADコンバータ、その性能が音の良し悪しに関係します。
デジタル・データはそのままの状態で聴くことはできません。私たちが音(音楽)として聞くためには最終的にデジタル・データを再度アナログに戻す、つまりデジタルからアナログへの変換、DA変換をしなければなりません。この変換部分(部品)がDAコンバータ、この性能も音の良し悪しに関係します。
初期のサンプラーは機器の出力段階でDA変換する場合が多かったのですが、ライブ演奏と違い録音の場合には可能であればデジタル・データのまま録音機や録音アプリ(パソコン)に入力したいのです。
もしサンプラーのI/OでAD変換して更にDA変換、アナログの音を経由してから録音機(録音アプリ)に送るとこの段階でまたAD変換となります。いくら性能の良いADコンバータやDAコンバータを経由したとしても、頻繁にAD変換とDA変換を繰り返すたびにデジタル的編集の最大の利点である「音の良さを維持するというか音の劣化が無い」と相反することになります。
録音におけるデジタル・データはなるべくAD変換とDA変換の回数を減らしたいのです。なるべくデジタル・データをそのまま次の機器や作業へ受け渡したいのです。

最終的に音楽CDにする場合、音楽CDに記録されたデジタル・データをDA変換して聴くことになりますが、音楽CDを制作する段階においてはデジタル・データのまま制作してゆく工程がベターということになります。

初期の録音ではデジタル音源からパソコンの録音アプリへのI/Oがデジタル・データのままで送れませんでしたが少しずつデジタル・データのままでI/Oできる様になりました。

当時のデジタル・データをやりとりするケーブルです。同軸ケーブルから一番下のレーザー・ビームを利用する光ケーブル(光ファイバー・ケーブル)に変化してゆきます。一番下の光ケーブルは初期のもので太いですね。
現在の光ケーブルは細い。
デジタル音源として使っている YAMAHA MOTIF-RACK ES から光ケーブルを経由して音楽(録音および再生)専用のI/Oである Roland UA-25 に送られます。この画像は UA-25 に入力される部分を一旦はずして撮影しています。ケーブルの先端が赤く光っています。レーザー光線が見えています。
この先端を左下の様に UA-25 背面にある OPTICAL IN (赤いMIDIケーブルの左)に接続、UA-25とパソコン(各種録音アプリ)は USBケーブル(一番右)で接続されています。パソコンの録音アプリでミキシングおよびマスタリングされたデータは音楽CDに(デジタル・データのまま)記録されます。
なおマックを利用していた頃、マックのG4やG5マシーンはパソコン本体に光ケーブルのI/O端子があり UA-25 の様な機器は不要でした。
G5マシンが突然壊れて後、現在では一部の作業を残して全てWindows環境に移行、現在は UA-25 を使っています。この機器にはMIDIやアナログのI/O端子があり重宝しています。

2014年12月26日金曜日

音楽制作について(10)

音楽におけるデジタル的編集、最初はMIDI規格にもとづく演奏情報(MIDIデータ)の利用や記録、そして編集でした。
録音スタジオの録音機がデジタル化すると同時に楽器業界でもデジタル音源の利用が始まります。
実際の楽器音や自然音をデジタル的に記録(わかりやすく言えば録音)したデータ(デジタル音源)をキーボードで演奏したりMIDIシーケンサで再生することが始まりました。デジタル的に記録(録音)したデータは当時の記憶媒体の性能からあまり長い時間ではなく短い時間のものでした。この様なデジタル・データを記録(録音)することをサンプリング(標本化)と言いました。音源のサンプルをデジタル録音で取り込むイメージです。そのデジタル・データ(サンプル)を記録(録音)し、これを編集して再生する機器をサンプラー(デジタル・サンプラー)と言いました。

私の制作では、ライブ演奏も多かったのでキーボードとサンプラーが一体になったタイプを使っていました(その画像は この投稿 の上から2枚目)が、左上の様に鍵盤が付いていない機器もありました。

ドラムスやパーカッションの様に発音後自然に減衰する音は取り込んだサンプルを単純に再生しますがある程度長く持続する必要がある音は上の様なパターンで再生します。

これはシンセサイザーの音作りに使われてきた音の再生パターンでエンベロープ(Envelope)とか包絡線(ほうらくせん)と言います。

A:アタック・タイム(attack time)…発音後最大量に達する時間
D:ディケイ・タイム(decay time)…次のSの量へ減衰して到達する時間
S:サステイン・レベル(sustain level)…AD経過後に一定レベルで持続する量
R:リリース・タイム(release time)…演奏終了(鍵盤を離したり演奏終了のコマンド受信)後に減衰して消えるまでの時間

デジタル・サンプルしたデータ(音)は鍵盤を押し下げる(演奏開始のコマンド)とADSのパターンで再生された後、鍵盤を弾いている状態(継続している状態)つまり鍵盤を離したり演奏終了のコマンドを受けるまで(厳密にはリリース部分の音も必要なのでこの繰り返しは音が消えるまで)はその音を続けるために繰り返し再生されます。これがループです。ループによる繰り返しが自然に聴こえないこともあり編集には苦労をしました。

ループの不自然さを解消する録音については以前 この投稿 の後半に書いています。

2014年12月14日日曜日

音楽制作について(9)そして音楽教室について(4)


私の音楽制作において特徴的なのは楽譜出版でしょう。

初期の教則本ベストセラー「ザ・ロック・キーボード」には譜例や練習曲の音がソノシートの形で付属していました。
ソノシートとは薄いシート状のレコード盤(アナログ)です。

別売品としてカセット・テープも出版されました。

これらの原盤(レコードを大量複製するもとの録音)は録音スタジオに友人(もちろんプロ)のミュージシャンを呼んで録音しました。
自分のバンドで録音したのです。

ほどなく前回書いた様に録音スタジオのテープレコーダがデジタル録音に変わり、大量複製する媒体もアナログ盤からCD(デジタル)盤に変化してゆきます。楽譜にもCDを添付することが始まります。出版社も自社で録音スタジオを作り、この5冊のシリーズ~明日から貴方もジャズ・ピアニスト~気軽にジャズ・スタンダード Vol.1~5から出版社が録音原盤を作り始めました。
アレンジ内容は「ピアノ・ソロ・ベスト・コレクション/ジャズ・サウンズ・ピアノ・ソロVOL.1~3」というシリーズ、好評のため合本再版されていましたが、更に再版する際に模範演奏CDを付けようとなったのです。
1冊目は出版社の録音スタジオ、出版社側の録音スタッフで録音しました。この録音には少々がっかり。録音スタッフの技術レベルの問題でした。プロの録音スタジオ現場を経験してきた私には耐えられないレベルでした。そこで急遽交渉、自宅で録音した方が安価でクオリティも高いことを説得、シリーズ2冊目以降は自宅で録音しました。そもそもMIDI演奏情報は私が作っています。ピアノ音も演奏情報を作った音で録音するのが自然です。わざわざ出版社のスタジオへ行く必要が無かったのです。


録音技師はずっと私の教室の発表会でお世話になっている角さんにお願いしました。彼は録音技術の本を出版しています。その本のことは ココ にあります。
自宅で録音するのを宅録(たくろく)と言いますが、私のアレンジ楽譜や教則本添付CDの原盤録音は宅録の時代に入ります。
楽譜原稿もその模範演奏の録音も全て自分のマックで作ります。
その後録音技術を角さんの作業から学び、ほどなくして完全に一人で制作する様になりました。楽譜も浄書データの入稿になりました。こうして私のアレンジ楽譜や教則本の印刷用版下、添付録音盤の原盤、可能な限り全部を完成させる様になりました。
私の教室でこれらの楽譜を教材指定することはありませんが、ときどき生徒さんが私のアレンジ楽譜をお持ちになります。
添付録音盤の音やもとの演奏データを利用することがあります。その場合にはもちろんテンポを工夫して少し遅くから練習に入ったり、その方の状態を見てアレンジも変更したりします。
これらの音楽制作面での進歩は教室における指導にも活用できていると思います。

2014年12月13日土曜日

音楽制作について(8)

MIDIシーケンサが実用段階に入り、巷のカラオケ録音における人が演奏する録音パートの割合が減ってゆきます。
初期段階ではドラムス・パートだけ「打ち込み」のデータ(リズム・マシーン用演奏データ)、他のパートはスコアを渡しておりました(他のパートは人が演奏します)。海外の録音スタジオの方が施設利用費や演奏者のギャラが安いそうで、私が一部の仕事を請け負ったカラオケ録音は海外録音でした。台湾やフィンランドへ録音に行ったそうです。
当時の録音スタジオでは多重録音用テープレコーダがアナログ(テープの幅が広かった!)からデジタルに移行が進んでいました。業界で言う「3324(さんさんにーよん)」というテープレコーダ(ソニー製PCM-3324)の入っているスタジオが増え、後にはソニー製PCM-3348が業界標準となります。

そしてCDデビュー!
事前に自分のオリジナル曲を「打ち込み」でデモ録音します。当時は前橋市大利根町に住んで居ましたが、自宅の「打ち込み」作業現場です。マック・プラス(MOTUのPerformer)にMIDI打ち込みデータを作り、色々なメーカからのモニターで預かっていた機材や自分の各種音源を利用して録音します。
デモ録音を聴いたプロデューサやディレクターからのアドバイスを受け、アレンジを修正、CD収録曲を選び、曲順を決め、実際の録音へ進みます。
最初の打ち込み段階で使ったシンセサイザーやサンプリング音、私は可能な限りアコースティックなサウンドを目指しましたので、デモ音のパートを実際の生楽器(アコースティック楽器)の演奏で差し替えてゆきます。

当時の打ち込みで録音に使用したサンプリング音源、特にストリングス・オーケストラの音は微妙にループが気になりました。
ループとは楽器の音をデジタル変換(録音)して利用する(つまりサンプリング)際、ある一定時間の比較的短いサンプルを使います。当時の記憶容量ではあまり長くサンプリングできませんでした。長い音符を演奏すると、そのサンプルを何度も繰り返します。これがループですが、その繰り返しが聞いてわかるというか、気になるのです。
私のデビューCDの録音スタジオは日本コロムビア(赤坂)の1スタジオでした。一番広いスタジオです。
私の師匠、故管野光亮先生の仕事でテレビ・ドラマ「白い滑走路」の音楽を録音した大人数のオーケストラを録音できる、つまりそのオーケストラを収容できるスタジオです。
その思い出のスタジオでぽつねんと一人でピアノを演奏しました。
私の楽曲のストリングス・オーケストラのループが気になるというので音響のエンジニアの方が面白い録音をしました。
オーケストラ録音をするスタジオなので、オーケストラ全員に録音した音を再生して聞かせる巨大なモニタースピーカーがあります。スタジオに入っている演奏者向け、つまり調整室からスタジオ内全員に聞いてもらうためのオーディオ再生システムです。
これでループが気になるサンプリング音を再生、スタジオの巨大空間に向けてスピーカから出た音をスタジオの真ん中に設置したステレオ・マイクで再度録音するのです。スタジオの巨大空間がエコールームになるのです。

マイクで再度収録したストリングスの音は本当に生のストリングスの様にソフトにマイルドにというか自然になっていました。

とても感激しました。

そんな風に少しずつ生楽器の演奏に差替えてゆき、最後に自分のパート、ピアノを演奏しました。

実際の生楽器のオーケストラ録音、セガ・サターン用CD-ROMのために録音したアレンジを担当した際もデモ音を「打ち込み」で作り、これを聴いて「これでよし!」となってからスコアを各パートに写譜します。私が管野先生の弟子の当時はこの作業をやっていたのですが、その時は流石に時間がありませんので専門業者に依頼しました。
ポリドールのスタジオに大編成のオーケストラを入れて一気に録音しました。そのことは ココ に書いています。

2014年12月8日月曜日

音楽制作について(7)そして音楽教室について(3)

前回、分解能という用語が出てきました。
テンポとは関係無く、音楽の基本となる拍である4分音符をどこまで細分化して表現できるかという性能です。分解能が小さい(分数で示されるので分母が大きい)程精密で細やかなタイミングで演奏を編集し再現できます。

4分音符の半分8分音符なら1/2、16分音符なら1/4、32分音符1/8、64分音符1/16…となります。当時(MIDIシーケンサが普及しはじめた頃)多かったのは1/96、分解能1/96の8分音符は4分音符の半分で48/96の長さ、4分音符を3分割する3連符(4分音符の1/3)は32/96となります。

QX-1は分解能1/384でしたが、マック・プラスで利用できるMOTU社製Performerは1/480でした。分解能の分母は3連符を正確に表現すべく「2と3の公倍数」ですが480では5連符も正確に表現できることになります。

最初にテンポと関係無くと書きました。テンポがある程度早ければ分解能が荒くてもあまり誤差は気になりませんが、喜多郎さんの楽曲でシーケンスを利用する場合はテンポが遅いのです。そこで1/384のズレがあると、そこだけ「おや?」ってわかります。「カックン」となるというか…

MIDIシーケンサが優れているのは自由にテンポを設定できることです。音楽教室では重要な要素です。最初から想定テンポで演奏できる人は少ないし、その様な方は余り習いにはお出でになりません。なかなか演奏がうまくゆかないから教室にいらっしゃるケースが多い訳で、演奏したい曲のテンポを少し遅くして練習し、演奏できる様になって来たら少しずつテンポ・アップ、最後には想定するテンポなり満足のゆくテンポで演奏できる様になります。

昨日のレッスンで Dave Grusin の名曲「Mountain Dance」のアドリブ部分を練習していたY.S.さん、テンポ入力の部分をご自分で少しずつアップして練習していました。既にテーマ部分は96(メトロノーム数字:4分音符96/1分の速度)で演奏できます。アドリブ部分、72で練習を開始、次に80、次に84、88とアップしてそれぞれクリア!最後に92で弾ける様になりました。傍らで見守っていましたがとても集中して練習されていました。一先ず92のテンポでアドリブを良く練習してから次に96でテーマとアドリブを続けて練習する予定だそうです。
この様な練習はとても重要です。それがMIDIシーケンサの登場で可能になったのです。

左の画像はMOTU社の楽譜アプリケーション Professional Composer で作ったもの(上の画像左下参照)です。これは著書「コンピュータ&MIDI(3)サウンドブック」の譜例、印刷用データを自分で書いて(現在の様にデータ入稿では無くレーザライタで一旦出力して出版社に渡していますが)提供しました。
印刷用楽譜の版下を作る作業を浄書(じょうしょ)と言います。これまで楽譜浄書は専門の業者に発注するしかありませんでした。浄書楽譜を校正できれば良いのですが、ポピュラー楽譜では校正をしないで出版されてしまうことが多く、出版後に浄書段階で発生したミスに気づいてがっかりすることもありました。
パソコンにおける楽譜アプリケーションの登場により、作編曲家が自分で浄書できる時代に入ったのです。楽譜データはSMFファイルを経由してMIDIシーケンサ(この場合は同じメーカのPerformer)へコンバートが可能です。デジタル的音楽制作の基本的な流れは当時と現在と基本は変わっていません。音楽の世界では早く(1980年代)からパソコンや各種専用機を利用したデジタル的編集が実用化されていたのです。

2014年12月7日日曜日

音楽制作について(6)そして音楽教室について(2)

喜多郎さんの楽曲では一定のパターンを繰り返すために使われたMIDIシーケンサですが、パターンとは言え仮に微妙なずれ(例えば4分音符の1/384)があると不自然に聴こえる(感じる)ことに気づきました。

MIDIシーケンサにリアルタイム(鍵盤を実際に演奏して)入力した演奏情報を分析したり、ステップ(演奏情報を数値的に)入力してよりよい演奏情報の編集を工夫する努力の中から「どの様な演奏が上手にあるいは下手に聴こえるか」ということがわかってきました。

そしてこの様なノウハウを自分の演奏に活かしたり、生徒さんへの指導に活かすことができる様になってゆきます(左上は教室に設置していた私の当時のMIDIセット)。

1987年5月に出版された「リズム・パート付きでマスターするポピュラー・ピアノ・ソロ/【リズム・マシン活用】ポピュラー・ピアノ・レッスン10」という曲集があります。当時盛んに使われたドラムス・パート用のシーケンサ(ドラム・マシーンとかリズム・マシーン)の演奏情報編集方法も書いたポピュラー・ピアノ曲集でした。

私の教室ではこれにベース・パートを加えてピアノ・トリオ用のマイナス・ワン(自分の演奏するパートを除いたバンドやオーケストラの音)を作り練習したり楽しめる様にして指導に使い始めました。

当時の教室の様子は ココ にあります。

このMIDIシーケンサによるMIDIマイナス・ワンの様子を見学に来た音楽業界の方もありこの様な演奏情報が後に通信カラオケやパーソナル・カラオケの商品化につながってゆきます。

2014年12月5日金曜日

音楽制作について(5)

若い頃、喜多郎さんのサポートをする仕事を担当していました。
全米ツアーについては音楽監督(サウンド面でのプロデューサ)として米国人のサポート・メンバーを指導、ツアーに送り出しました。
米国は外国の伝統文化(日本であれば邦楽など)を例外とし、商業音楽の世界では自国に利益をもたらす活動しか許可しません。つまり日本人のツアー・サポートのメンバーには商用のビザは発給されませんので米国人ミュージッシャンを現地で募集、オーディションをしてバンドを組むしかありませんでした。喜多郎本人も米国のレコード会社からアルバムをリリース、そのアルバムの楽曲を演奏することでようやくツアーを組むことができたのです。

私のパートは基本的には左手がベースで右手がピアノ(アコースティックでは無く主に YAMAHA のエレクトリック・グランド)と各種シンセサイザー、そして MIDIシーケンサのコントロールでした。
一番上のセット図にあるシーケンサは YAMAHA QX-1 となっていますが、ライブの画像を見ると初期のツアーでは喜多郎さんが所持ずる Roland のマシンを使っていた様です。後にこれが QX-1 となります。
ここでのMIDI活用は主にこのシーケンサ、彼の楽曲の内、ある一定のパターンを繰り返す(文字通りのシーケンス)に利用していました。シンセサイザーなど鍵盤楽器を三方向に多数積み上げていますが、どれも基本は手弾きでした。

画像2枚目はクアラルンプール、左は奥只見、
そして香港、次の2枚も香港だと思います。

香港と思われる3枚の画像にはエレクトリック・グランドの代りに DX シリーズの最上位機種 DX-1 が前面にあります。
自分のベース、これを一曲だけ使用したことがありますが、喜多郎さんの楽曲におけるベース音はやはりずしんと太く重いモーグ(日本ではムーグと発音しますね)が最適でした。

2014年12月4日木曜日

音楽制作について(4)

今日は音楽をデジタル的に編集する技術が出て来た頃、黎明期の話です。

当時の画像を探しましたが見つかりませんので、私の著書「コンピュータ&MIDI(3)サウンドブック」から関連画像を利用します。

この本は音楽之友社の編集者J.K.様の企画、既に(1)と(2)が出版されていました。「(これまでの(1)や(2)と違い)技術的な話ではなく音楽の制作現場でコンピュータやMIDIを実際に活用している音楽家の視点から音楽ユーザにわかりやすい本を書いて欲しい」という執筆の依頼でした。

そのJ.K.様には本当にお世話になりました。
コンピュータやMIDIの知識や情報という面もありましたが、それよりも広く音楽全般、特にピアノという楽器についての素晴らしい知見や情報の恩恵を受けました。
今につながる一番需要な要素は、調律師のI.H.様をご紹介下さったことです。

仕事場(音楽教室)で活躍する素晴らしいグランド・ピアノはI.H.様から購入しました。このピアノのみならず私のライブ活動や教室発表会におけるピアノの調律、昨年のピアノ選定作業については実に有益なアドバイスをしてくれました。

思えば今こうして元気に仕事が続けられていること、教室の存続(途中一時期のベーゼンドルファーもI.H.様からのご紹介)、ピアノについてのあれこれ、I.H.様なくして今の私はありません。そしてI.H.様をご紹介下さったJ.K.様、お二人には本当に感謝をしております。

私のパソコン体験は「マック・プラス」と「NEC(記憶によるとPC-8801mkⅡ)」から始まります。

実際に使っていたPC-8801mkⅡの画像が見つかりませんでしたので当時の上位機種(普及機種)PC-9801の画像をご紹介。
PC-8801mkⅡでは楽譜入力アプリケーション MUSIC PRO-98 を試しました(左)。J.K.様の勧めもあり、前職音楽出版社時代からの知人が開発販売をしていたという経緯もあります。

しかし正直のところ「マック・プラス」で使っていたMOTU社製のアプリケーションとの比較にはなりませんでした。この当時のアプリケーションのレベルは「マック・プラス」のアプリケーションの優秀さが際立っていました。

次回は私の音楽教室におけるMIDIの応用や演奏現場(喜多郎さんのステージ等)について書いてゆきます。

2014年12月2日火曜日

音楽制作について(3)そして音楽教室について(1)

ここ数日の一連のやりとり、くだんの生徒さんから何やら感激した様子の長文のメールを受け取りました。その一部をご紹介しますが、この内容は今後のブログで書いて行く最後の方に関連させ後日取り上げる予定です。

「昨日は心配事の多かったSibeliusですが、今日はとってもテンションの上がる記事を見つけました!少し長くなりますが・・・。Sibeliusの記事を書いていた、くだんの作曲家氏のブログで、(中略)Sibeliusにして良かった!と思いました」とのことです。
少し元気になった様ですね!

今日は音楽をデジタル的に編集する技術が出てくる前の時代、私がプロの音楽家(演奏および作編曲と音楽指導)になった頃のことを書きます。音楽指導のことも関連させますので音楽教室におけるデジタル技術応用という意味で「音楽教室について(1)」のタイトルも掲げました。

以前書いていた「My Musical History」におけるこの時代は My Musical History(8) ~ My Musical History(23) の投稿(合計16回)となります。

有名アーチストのツアー・サポート(当時の表現ではバック・バンド)の仕事をする一方、作曲や編曲を音楽制作の現場で仕事をしながら学んでおりました。
同時に、一年だけ在籍したヤマハのネム音楽院の関係からヤマハの音楽教育システムを開発し管理する財団法人ヤマハ音楽振興会の仕事(ポピュラー音楽に関するグレードの設定やそのための教材や模範例の制作)に関与しました。

そうこうする内に同じ仕事の流れからリットー・ミュージック並びに立東社から仕事の依頼があり、楽譜出版や音楽雑誌の仕事が急増します。雑誌「キーボード・マガジン」や雑誌「ジャズ・ライフ」に毎月連載のセミナーを書く一方、音楽記事や楽譜のための採譜、特集記事の執筆、楽譜出版のための編曲や採譜という様な仕事をしておりました。

そしてヤマハ新潟センターから声がかかりました。
ポピュラー・ピアノ教室の募集をしたら多数の受講者が集まったが指導者が居ないので来て欲しいとのこと。毎月4回新潟へ行って教え、その日は新潟に泊まり翌日午前中も新潟で教え、その後高崎に移動して午後教えてから帰る…そんな一泊2日のレッスン出張が始まります。4年近く続きました。まだ新幹線が開通する前のことです。

その当時のことは ココ や ココ にあります。

ある日新潟センターのセンター長T.M.様(後に財団法人ヤマハ音楽振興会の理事長)から次の様な依頼がありました。
「このセンターで学んでいる子供たち(私の教室は大人向けなので私の生徒以外ですね)はバンド演奏に接することなくエレクトーンなど鍵盤楽器でポピュラー音楽を学んでいる。ぜひ生演奏でバンドの素晴らしさを伝えて欲しい」ということでした。
エレクトーンという楽器はポピュラー音楽への入門という意味では楽しそうですが、反面、自動リズムや自動伴奏に合わせて演奏する世界にはまり込んでしまう傾向もある様です。自動リズムや自動伴奏、それは練習や合わせる音として「楽しい」はずですが、これに合わせてさえいれば何となく様になってします。便利な反面実はビート感やテンポ感やリズム感が育たない危険を孕んでいます。そんな危険性を感じたのか?私にバンドによる実演を依頼されたのでは無いかと思います。

当時、ステージの仕事や録音があるときに集まってくれたメンバーを率いてヤマハ新潟センターで演奏しました。主に当時流行のフュージョン、ジョー・サンプル等ちょうど採譜曲集を出しておりました。これを実演できるのは楽しいことでした。このステージの後、新潟の夜のライブ活動?で良く立ち寄った「トライアンフ」というライブ・ハウスにも出演しました。

その後いわゆる「打ち込み」による音楽の進歩で音楽教室の現場でもデジタル的な音楽編集や録音を利用することが進みました。その一方で、その限界というかやや「飽き」も出てきたのでしょう。
マシンに依拠した演奏よりマシンに依拠しないバンドの生演奏、ピアノもデジタル的なものからアコースティック・ピアノの生演奏の実演が大切という雰囲気になっています。
私がプロになった頃の価値観が見直されてきた様に思います。
私の現在の教室では生のバンド体験を含めて年に二度のピアノ発表会、そこでは生徒諸君が生演奏、アコースティック・ピアノ(なるべく状態の良いグランド・ピアノ)を演奏することを続けています。これに協力してくれるプロの優秀なドラマー、ベーシスト、音響技術者、ピアノ調律技師、優秀なスタッフにも支えられ、毎年の発表会は楽しく有意義なものになっていると思います。

次回はデジタル的な編集や録音の黎明期、そしてこれを教室の指導に応用し始めた頃のお話をします。

2014年12月1日月曜日

音楽制作について(2)

生徒さんから頂いたポインセチア。教室入口が華やぎます。
ありがとうございます。

さて昨日の投稿の後、同じ生徒さんから頂いたメールです。一部をご紹介し、その不安に対して書いてゆきます。「Sibeliusの記事で気になったのは、本当にこのまま開発終了になってしまって、徐々に衰退してしまったら困るなと思いまして。これから先生のご指導も受けて極めて?いきたいと思っていた矢先でしたので。ただこのような動きの早い時代ですから、Sibeliusに限らず何があるか予測はつきません。iPhoneですら5年後にあるかどうか、わからないと思います。その時々で最善(と思われる)選択をしていくしかないと、割り切るしかないですね。。もちろん私のレベルではSibelius7で十分すぎますので、余計な心配している暇があったらどんどん勉強しなきゃですね(笑)~(後略)」

私も不安は感じます。仮に開発が終了したとして、現時点でのアプリケーションとしての機能が私なり生徒さんなりユーザの必要とする状態であれば「しばらくは問題なく使える」と考えてよいでしょう。衰退したとして、それは時代の変化という環境要素もある訳で、必ず多くのニーズに対応した何らかの手が見えてくるはずです。同じ様な事で困る人があれば、ビジネスなり、ビジネスでなくてもネット上の関係から対策は見えるはずです。

私の音楽制作のヒストリーから古い時代のことは後日紹介するとして、私のところでは古いバージョンのアプリケーションがまだ現役で活躍しているという事実をお伝えしましょう。少し元気が出るかな?
採譜の際に資料音を聴いて解析したり、模範演奏音を編集したり、教材用の音を編集するのはいまだに MOTU 社製 Digital Performer V.3 です。
今年、Windows対応をしたというのでバージョンアップしたのは V.8 ですが、V.3 以降つまり V.4 ~ V.7 というのはマックのOSに応じたバージョンの変化です。アプリケーションの基本構造は同じですから実用上の問題はありません。
問題はマックのOSです。私のところでまだ現役なのはOS-9のスタンドアローンのマシンです。むしろスタンドアローンだから問題が起きないのです。もちろんこのOS-9マシン(もう一台あります)が壊れたら使えなくなります。
そのときは V.8 (DP-8)を使い始めます。
楽譜の方は同じ MOTU 社製の Mosaic というアプリケーションを使っていました。
こちらはPDFファイルの出力が1ページ単位になってしまうという面倒もあり、Windows環境で優れたアプリケーションということで Sibelius を使い始めました。
マックOS-9マシンが現役ということは Mosaic で楽譜も作れるし、以前作ったファイルを開いて編集することは可能です。以前作ったファイルを PDF ファイル経由で Sibelius にコンバートして編集することは時々あります。

衰退したアプリケーションでもそれを使えるマシン側の環境があればかなり長い間使えるということだと思います。

歩数記録を集計しました。

先月(2014年11月)の一日平均歩数:9,137歩
今年(2014年1月~11月)の一日平均歩数:10461歩

少しペースが落ちましたが、当初は九千歩目標でしたので、あまり無理をしないで続けようと思います。